
ただただ計画もなく、見よう見まねで筋トレを行なっていても、なかなか筋肉はつかないし、ダイエットも進まない。
トレーニングの効果を最大限に発揮し、効率よく体を変えたり、パワーをつけるには、基礎の部分が大事である。
この基礎の部分を筋トレの「3原理・5原則」という。
これまで3つの原理(過負荷の原理、特異性の原理、可逆性の原理)を解説してきた。
残るは5原則。今回はそのうちの「全面性の原則」について深掘りしていく。

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目次(クリックでジャンプ)
「全面性の原則」とは

全面性の原則(Principle of Balanced Development) とは、特定の筋肉や能力だけでなく、全身をバランスよく鍛えることが重要という考え方である。
例えば、
・上半身ばかり鍛えていて、脚のトレーニングをしないと、バランスが悪くなり怪我に繋がる。
・筋トレだけでなく、柔軟性や持久力も鍛えることで、より強く・動ける体を作れる。
・片側の筋肉(右腕・左脚など)ばかり鍛えると、体のバランスが崩れ、動きにくくなる。など。
この原則を意識することで、筋力・持久力・柔軟性・バランス・神経系の発達をバランスよく向上 させることができる。
つまり、「特定の部位・能力に偏らない」ことが重要ということである。
特定の部位だけ鍛えるとどうなるのか

特定の部位、例えば大胸筋だけ、とかお尻だけ、とか。
特定の部位だけを鍛えると、「筋力のアンバランス」 や 「怪我のリスク」 が発生する。
上半身のみ鍛える
例えば、上半身だけトレーニングをして、下半身はしないとしよう。すると、上半身の筋肉が発達し重くなる。重心も上に偏るので不安定になり、スポーツや日常動作で動きづらくなる。
体の前側(胸、腹筋)のみ鍛える
これは男性にありがちなパターン。やはりこちらも良くない。
背中の筋力不足に陥り、腰痛の原因になる。また、大胸筋に引っ張られて肩が前に巻き込み、姿勢が悪くなる。(猫背になりやすい。)
右腕・左脚など、片側だけ鍛える
特に球技にありがちなパターン。利き手や利き足に左右されるので、どうしても片側が発達しやすい。
競技種目によっては左右のバランスが崩れ、パフォーマンスが低下したり、ケガのリスクが上がる。
筋トレのみ
俺もそうなんだけど、筋トレをガチでやっている人はストレッチなどの柔軟性を軽視しがちだ。しかしこれも良くない。
体が硬くなり、可動域が狭くなったり、怪我のリスクも上がってしまう。
また筋トレは、1セット単体で見るとせいぜい30秒から1分程度しか動いていない。マラソンなどの長時間動き続ける競技に比べて、休憩している場面が多いが、これも要注意。
刹那的な部分では苦しいが、長時間しんどいというわけでは無いので、どうしても心肺機能が低下しがち。よって長時間動き続ける事が苦しくなっていく。
初心者が無意識のうちに陥りがちな失敗

筋トレを始めたばかりだと、できる種目に限りがあるため、どうしても偏りやすい。
また、楽しいと思える種目は毎回やりがちなので、無意識のうちに偏る傾向にもある。
そこで、ここでは「初心者が陥りがちな7つの失敗」を例に挙げていく。
7つの失敗例と改善策
1. 上半身ばかり鍛えて、下半身を鍛えない(チキンレッグ問題)
典型的な間違い
・ベンチプレスやアームカールばかりして、
脚のトレーニングをしない。
→結果として 上半身だけ発達し、
下半身が細い「チキンレッグ」になる。
→体のバランスが悪くなり、見た目が不自然。
2. 前側(胸・腹筋)ばかり鍛えて、背中を鍛えない(猫背になる)
典型的な間違い
・腹筋(クランチ)やベンチプレスばかりで、
背中のトレーニングをしない。
→背中の筋力が不足し、肩が前に巻き込まれて
「猫背」になってしまう。
→腰痛の原因にもなる。
3. 片側だけ鍛えて、左右差が生じる(非対称な体になる)
典型的な間違い
・右利きの人が右腕のトレーニングばかりしてしまう
(アームレスラーなど)
→片足スクワットや片腕プレスで片側だけ強くなる
→スポーツや日常動作で左右のバランスが崩れ、
怪我のリスクが高まる
4. 筋トレばかりして、有酸素運動を全くしない(心肺機能の低下)
典型的な間違い
・筋トレに集中しすぎて、有酸素運動を全くしない。
→体脂肪が減りにくく、筋肉はついているのに
お腹が出たまま。
→心肺機能が低下し、 息切れしやすくなる。
5. ストレッチをせず、柔軟性が低下する(ケガのリスクが高まる)
典型的な間違い
・筋トレばかりでストレッチをしない。
→可動域が狭くなり、 関節の動きが悪くなる。
→スクワットで膝が曲がりにくい、肩の可動域が
狭くなるなどの問題が発生。
6. 腕を太くしたいからアームカールばかりする
典型的な間違い
・腕全体を太くしたいのに、
アームカールばかりしてしまう。
→実は、腕を太くするには
「上腕三頭筋(腕の裏側)」の方が重要。
→コンパウンド種目(多関節種目)もやらないと、
腕は大きくならない。
7. 負荷ばかり意識して、フォームを無視する
典型的な間違い
・重い重量を持ち上げることに集中しすぎて、
フォームが崩れる。
→スクワットで腰が丸まる、ベンチプレスで
肩を痛めるなど、ケガのリスクが高まる。
トレーニングメニューの組み方

「全面性の原則」という難しいワードで解説しているが、要は、
「いろんな種目、マシンでやりましょね。」
ということである。
フリーウェイトばかりとか、有酸素マシンだけとかではなく、フリーウェイトもマシンも有酸素もストレッチも、いろんな角度からいろんなアプローチをすることが大事である。
全身をバランスよく鍛えるには、どのようなメニューを組めばいい?
以下は筋トレ初心者に向けて、「全面性の原則」を考慮したトレーニングメニューの一例である。
部位 | 種目 |
---|---|
脚 | スクワット、レッグエクステンション/カール、グルート |
胸 | ベンチプレス、ダンベルフライ、チェストプレス |
背中 | 懸垂、ラットプル、ローイング |
肩 | ショルダープレス、サイドレイズ、リアレイズ |
腕 | アームカール、フレンチプレス、ナロープレス |
体幹(腹筋) | クランチ、プランク、レッグレイズ |
有酸素 | ウォーキング、HIIT、バイク |
特定の部位を鍛えるより、全身トレーニングの方が良いの?

特定の部位ばかりを鍛えると、バランスの悪い体になることはもちろん、偏重心や怪我のリスクもある。結果、運動をしているのに、姿勢が悪くなったり、通院を余儀なくする可能性も。
全身をバランスよく鍛えることをおすすめする。
例えば、腕を太くしたい場合でも、全身を鍛える方が効果的なのか
短期的な目標の場合、その部位の頻度を上げることで、他の部位よりも早く成長させられる。しかし、1年や2年といった長期間はおすすめしない。
例えばアームカールを1年中やったとしよう。当然腕も強くなるし、重量も伸びる。しかし、トレーニングをしていない腹筋や腰がその負荷に耐えられなくなり、怪我をする。
このように、腕の成長ばかりに気を取られていると、それ以外の部位への負担が大きくなってしまう。
体幹の強化が、他の部位のトレーニングにも影響を与えるのか知りたい。
体幹(腹筋)は、実はほとんどの種目で使われている。(鍛えられている。)
体のバランスを常に取り続けるには、腹筋の力が重要。つまり、腹筋のトレーニングをしていなくても、他の部位(種目)で間接的に鍛えられている。
かといって腹筋のトレーニングを全くしないでいると、やはり他の部位に負担が乗ってしまうし、他の部位や種目が伸びなくなる原因にもなる。
「今日鍛える部位 + 腹筋1種目」くらいのイメージで思っておいてもらえたら良い。
柔軟性や持久力も鍛えるべき?

筋トレだけではなく、柔軟性や持久力も鍛えた方が良いのは間違いない。いろんな動きを取り入れた方が、体はその負荷に耐えようとして成長するからだ。
しかしあれもこれもと、いろいろ手を出すとどれもが中途半端になる可能性もあるので、できる範囲で構わない。
まとめ
原理原則シリーズを書いてて思うんだけど、実は無意識のうちに取り入れているものもあったりする。
なので、意識しすぎる必要はないと個人的には感じている。
好きな種目を見つけて、それが伸びてくると、「じゃあ次はこの種目」とか「この部位も強くしたい」など、どんどん欲が出てくるので、それに従えば良い。
3分割や5分割で筋トレを行なっている時点で、ほとんどの場合「全面性の原則」はクリアできているので、難しく考えないで大丈夫。
4,000字を超えたところで今回の記事は以上となる。
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